壁内結露はなぜ起こる? 知っておきたい原因と対策


壁内結露が起こる原因を知らない人は注意してください。日本の家の寿命が短い理由のひとつが、壁内結露です。大切な家を結露による被害から守るためには、原因を把握して、必要な対策をとらなければなりません。

目次

  1. 壁内結露とは
  2. 壁内結露が起きる原因
  3. 壁内結露による被害例
  4. 壁内結露を防ぐための対策

1.壁内結露とは

1-1.表面にできるのは「表面結露」

「結露」と聞いて一般的に思い浮かべられるのは、ガラス窓や壁にできる水滴ではないでしょうか?特に寒い冬に発生しやすいこの結露は「表面結露」といいます。
暖かく湿った空気が冷えた場所に入り込むと、ガラス窓や部屋の壁などの表面に水滴が溜(た)まる現象です。冬は暖房を使用するため、室内と室外の温度差が激しくなります。冷えた外気の影響で冷たくなったガラスや壁に結露が起こりやすくなっているのです。この表面結露もカビの原因となるほか、内装材をはがれやすくするため注意してください。

1-2.内部にできるのが「壁内結露」

一方、壁の内部や床下、屋根裏など人目につかないところに発生する結露のことを「内部結露」もしくは「壁内結露」といいます。
壁の室内側に防湿層がなかったり施工不良により防湿層に穴が開いていたりすることから、湿った空気が壁の中に侵入してしまうのです。壁の中には断熱材が詰まっています。すると、流れ込んだ空気が断熱材の中にとどまってしまうでしょう。このようにして壁の中に溜(た)まった湿った空気が冷えて結露となってしまうというわけです。

1-3.壁内結露は被害が大きいのが特徴

表面結露と違って、見えない場所で発生している壁内結露は気づきにくいという点が問題となります。そのままの状態で放っておくと、さまざまな被害をもたらしかねません。住宅の主要構造部を腐らす可能性も高いので、とても恐ろしい「家の病気」といえるでしょう。

2.壁内結露が起きる原因

2-1.結露とは

まずは、結露が起きる仕組みを簡単に理解しておきましょう。冷たい飲み物をコップに入れておいたら、コップの外側にたくさんの水滴がついてしまっていたという経験はありませんか?この現象が結露です。
同じような現象が部屋の壁や窓ガラスだけでなく、壁の中などでも起きていると考えてください。

2-2.結露ができるメカニズム

結露が発生する仕組みをもう少し詳しくお伝えします。空気は温度により、性質が変わるという特徴があるのです。暖かい空気は水蒸気をたくさん含むことができます。ところが、冷たい空気はあまり水蒸気を含むことはできません。「暖かく湿った空気」という言葉をよく耳にすることを思い出してください。
空気中に含まれる水蒸気の最大量を「飽和水蒸気量」といいます。この飽和水蒸気量は気温によって変化し、温度が10度上がれば約2倍にもなるのです。たとえば、気温10度の空気の飽和水蒸気量は9.4gですが、25度の気温では23.1gに増えます。
では、逆の場合を考えてみましょう。25度から10度に気温が変化したときのことを考えてみてください。23.1gもあった飽和水蒸気量が9.4gに減少してしまうのですから、空気中に含みきれなくなった水蒸気が水となってしまうのがお分かりいただけるでしょうか?
このようにして、暖かい空気が冷えて抱えきれなくなった水蒸気が水に戻って水滴となるのです。結露が発生する仕組みで重要となるのは、「温度差」と「空気の流動」ということを覚えておいてください。

2-3.壁内結露ができる原因

冬に起こる壁内結露は、暖房によりあたためられた空気が壁内に侵入した後に外気の影響で冷やされて発生します。夏の場合は、暑く湿った外気が壁の中に入り込み、冷房で冷やされた室内側の壁に触れることが原因です。この夏に起こる結露は空気の流れなどが逆になるので、「逆転結露」と呼ばれることもあります。
それから、「蒸し返し減少」といわれるものもあるのでご紹介しておきましょう。夏の強い日差しを浴びると外壁の温度は50度以上にも達します。その熱は、外壁に接している合板や柱などにも伝わってしまうのです。そして、あらゆるところから水蒸気が発生しやすくなります。水蒸気は木材に吸収されることもありますが、防湿層に達してしまうのは避けられません。そこで、冷房の影響により冷やされて結露が発生するというわけです。

3.壁内結露による被害例

3-1.壁内にカビ

壁内結露が起こると、断熱材にカビが発生します。壁の中での通気層が完全につくられていないと結露が生じ、いたるところにカビが発生するでしょう。

3-2.断熱材が劣化

断熱材にはグラスウールやロックウールといった綿状の素材が使われることがあります。この種類のものは水を吸い込むと縮んでしまう性質があり、元に戻ることはできません。
ある住宅では、壁内結露によりグラスウールが湿気を含んで縮んでしまっていました。つまり、断熱材の役割を果たしていなかったのです。このように、断熱材が縮んでずれ落ちていると部屋はあたたまりません。部屋があたたまらないという相談を受けたことがきっかけで、業者が壁内結露による被害を発見したというケースがありました。

3-3.外壁の老朽化

壁内結露が原因で壁の内側が腐ってしまい、外壁がボロボロになってしまったという事例もあります。壁の中が完全に密閉状態になっていたので湿気がこもっていたのです。その湿気は壁内だけでなく外壁にまで達して、外壁がはがれ落ちたり欠けたりしていました。

3-4.柱の腐食

壁内結露により、築10年にも満たないという住宅の木材が腐っていたというケースがあります。壁の中だけでなく、床下や屋根裏もすべてです。壁内に通気層が確保されていなかったために、このような影響を及ぼしていました。

4.壁内結露を防ぐための対策

4-1.壁内結露を防止するポイント

壁内結露を引き起こさないためには、「防湿」と「湿気排出」がポイントとなります。水蒸気が壁の中に入り込まないように、壁内の室内側に防湿層をつくっておかなければなりません。そして、壁内を乾燥した状態に保つように、侵入した湿気を排出できる仕組みをつくっておきましょう。

4-2.湿気を通しにくくする

壁内の室内側に防湿層をつくって、室内の水蒸気が壁の中に入ってこないようにします。たとえば、防湿層がついているグラスウール断熱材は、湿気を通しにくいプラスチックフィルムなどを片面に貼りつけてあるのが特徴です。このような断熱材を室内側にしっかりと確実に付けておかなければなりません。

4-3.湿気を排出する

水蒸気が壁内に入り込んだときのことを考えて、排出できるような構造にしておくとよいでしょう。外壁に通気層を設けておくと、壁内に侵入してしまった水蒸気を排出することが可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。壁内結露に関して、最後にまとめておきます。

  • 壁内結露は気づきにくいという点が問題
  • 壁の中に溜(た)まった湿った空気が冷えて結露になる
  • 断熱材にカビが発生する
  • グラスウールやロックウールといった綿状の素材の断熱材は縮んでしまう
  • 外壁の老朽化も引き起こす
  • 柱などの木材が腐ってしまったケースもある
  • 「防湿」と「湿気排出」がポイント
  • 壁内の室内側に防湿層をつくって室内の水蒸気が壁の中に入ってこないようにする
  • 水蒸気が壁内に入り込んだときのことを考えて、排出できるような構造にしておくとよい

目に見えないからといって壁内結露を放っておくと手遅れになる可能性もあります。壁内結露が発生しにくい対策をしておきましょう。


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