あなたのマンションは大丈夫?コンクリートのひび割れを補修する方法


コンクリートのひび割れの基礎知識!

築年数が長くなると必ず出てくる困りごとといえば、外壁のひび割れではないでしょうか。一軒家のひび割れであれば自力で直すことも可能ですが、さすがにマンションのコンクリートともなればまず不可能ですよね。

そこで、今回はマンションにおけるひび割れの補修知識について中心にご紹介します。

  1. マンションのひび割れ(クラック)とは?
  2. マンションのひび割れ(クラック)について
  3. マンションのひび割れ(クラック)補修工事について
  4. マンションにおけるひび割れ(クラック)補修工事の詳細
  5. マンションのひび割れ(クラック)補修業者選ぶ際のポイント
  6. マンションのひび割れ(クラック)工事に関するQ&A

これらの記事を読むことで、マンションにおけるひび割れ補修の基礎知識を得ることができます。補修方法を間違えて失敗するのを避けるためにも、ぜひ最後までお付き合いくださいね。

1.マンションのひび割れ(クラック)とは?

マンションのひび割れ(クラック)とは

1-1.マンションの構造について

あまりしられていませんが、マンションの構造にはいくつかの種類があります。細かく分けるとたくさんあるのですが、大きく分けると主に2種類です。すなわち、『ラーメン構造』と『壁式構造』に分けられます。

1-1-1.ラーメン構造

ユニークな名称ですが、もちろん食べ物のラーメンとは全く関係がありません。『構造』を意味するドイツ語であるRahmenという言葉から来ています。

ラーメン構造とは、平たくいえば『柱と梁(はり)によって建物を支える構造』のことです。柱と梁(はり)を長方形に組み、接合箇所を溶接などで固定することによって建物にしていきます。鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造などの建物で最も採用されている構造方式です。当然、マンションでも多く採用されています。

ラーメン構造のメリットは間取りの自由さです。梁(はり)と柱さえあれば建物としての強度が保たれます。ですから、壁をたくさん作って小部屋を多く作るもよし、逆に壁を減らして大部屋を作るもよしです。

ただし、壁が強度に関係がないために薄くつかられがちで、隣の部屋の音が聞こえてしまうというデメリットがあります。

また、地震にはあまり強くありません。もちろん、マンションは耐震補強もしっかりとされていますが、それでも不安は残ります。

1-1-2.壁式構造

ラーメン構造が柱と梁(はり)なのに対し、壁式構造はその名のとおり『壁、床、天井で建物を支える構造』です。イメージとしてはボックスティッシュをたくさん積み上げて建築するようなもの、と考えてもらえばわかりやすいでしょう。もちろん、それぞれのボックスティッシュは完全に固定されているものと考えてください。

ラーメン構造が点と点で建物を支えているのに対し、壁式は面と面で建物を支えているため、地震に対して非常に強いという大きなメリットがあります。

また、壁を使って建物を支える都合上、強度を高めるために分厚くしますから騒音なども気になりません。さらに、柱や梁(はり)がない分だけ、より広い部屋を作ることが可能です。

ただし、壁式構造は硬さがある代わりに粘りがありません。そのため、低・中階層であれば高いはずの耐震性も、高層になると建物の粘りが足りず折れてしまう可能性が高くなってしまいます。そのため、法令によって5階以下の建物にだけしか使用できない構造方式です。

また、壁自体で建物を支えるため、強度を確保するためにあまり大きな窓を設置することができないというデメリットもあります。

1-2.ひび割れについて

マンションは一般的に鉄筋コンクリート造です。つまり、主な建材は鉄筋とコンクリートとなります。

壁や床などに使用されているコンクリートはひび割れを起こすことが珍しくありません。自重や地震、乾燥による収縮、鉄筋のサビによる爆裂現象などが主な原因です。

ひび割れには主に『ヘアークラック』と『構造クラック』に分けられます。

ヘアークラックとは、その名のとおり髪の毛(ヘアー)のように細いひび割れ(クラック)のことのです。0.1~0.3ミリほどののものを一般的に呼びます。原因は主に経年劣化です。緊急性が高いひび割れではありません。しかし、長く放置しているとそのうち悪化し、雨などがしみこむことによって鉄骨がサビてしまうのがネックです。鉄骨がサビてしまえば、当然建物の強度は下がります。もしも大規模な地震が来れば耐えられないかもしれません。

構造クラックとは、建物の構造的な欠陥や、地震、地盤沈下などが原因で発生するひび割れのことです。放置していると地震の際に建物が崩れるリスクが高まります。また、めったにありませんが、最悪の場合は自然崩壊してしまう可能性もあるでしょう。

マンションのひび割れは、構造に欠陥があるために起こるものもあるんですね。
はい。ですから、大きなひび割れが発生したら原因を突き止めることが大切です。

2.マンションのひび割れ(クラック)について

マンションのひび割れ(クラック)について

2-1.発見したらまずすること

まずはひび割れの幅がどのくらいかを調べましょう。

ヘアークラック程度であれば緊急性はないので、補修時期の計画などを立てることができますよね。しかし、構造クラックの場合はそうもいってられません。

日本周辺では1年間に5000回近く地震が起きています。このうち、マグニチュード7以上の地震は1年間で『3回』も起きている計算です。さらに、マグニチュード6以上に基準を落とすと、なんと1年間に『20回』もの地震が発生していることになります。つまり、計算では毎月1回以上の大地震が起きる計算です。このことは気象庁の公開しているデータで確認することができます。

●気象庁『地震について』:http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq7.html

いつ大地震が来てもおかしくありません。そして、いざ地震が起きたときに構造クラックを起こした建物が耐えきれる保証などないのです。

大きなひび割れを見つけたら絶対にそのままにはせず、必ず専門業者に相談しましょう。

2-2.ひび割れの度合いのセルフチェックをしよう

ひび割れの度合いをチェックする際には、クラックスケールというものが便利です。定規やメジャーなどでも測れますが、できれば用意しておきましょう。

さて、ひび割れの度合いチェックですが、緊急度が高いのは『幅2ミリ以上・深さ4ミリ以上』のひび割れとなります。2ミリ以上となると構造クラックの可能性が非常に高いためです。また、2ミリ以上のひび割れができている場合、棒などでつつくと簡単に砕けて破片が散らばるようなことがあります。この場合は特に緊急性が高いので、必ず近いうちに専門家へ調査依頼をしましょう。

1ミリ程度であれば、そこまで緊急性は高くありません。ただし、大きな地震が来れば崩壊するリスクがあるので、やはり近いうちに専門家に調査をしてもらうのが賢明です。

とはいえ、内装や外装の素材によってはひび割れがあるかどうか確認しづらい場合もあるでしょう。そのようなときには、水漏れからひび割れを判断することもできます。どこかにひびが入っていなければ、水が漏れるわけがないからです。水漏れのある場所にはひび割れがあると考えてください。

ひび割れを発見したら、セルフチェックすると原因が分かるかもしれないんですね。
はい。セルフチェックをして構造クラックが疑われる場合は、すぐに業者に調査を依頼しましょう。

3.マンションのひび割れ(クラック)補修工事について

マンションのひび割れ(クラック)補修工事について

3-1.工事が必要な場合とは

基本的に、ひび割れが起きていれば補修が必要です。その中でも、構造クラックを引き起こしている場合は早急な修理が求められます。

とはいえ、構造クラックが起きる前に工事することが1番大切です。ですから、遅くとも1ミリ以上のひび割れが見つかった段階で補修工事の依頼をしてください。

3-2.工事方法について

3-2-1.シール工法

シール工法はヘアークラック(0.2ミリ以下)に使用される補修方法です。ひび割れ部分にシーリング材やエポキシ樹脂を塗り埋めていきます。

3-2-2.エポキシ樹脂注入工法

ひび割れが0.2ミリ以上の場合に使用される補修方法です。ひび割れ部分が動くようならば軟質系エポキシ樹脂を使用します。挙動がないようであれば普通のエポキシ樹脂を使用するのが一般的です。

エポキシ樹脂の注入は手動で行う方法と、機械で行う自動式低圧注入工法の2種類があります。

3-2-3.Vカット工法・Uカット工法

ひび割れが0.1ミリを超える場合に使われる補修方法です。ひび割れ部分をV字、またはU字にカットし、補強材(シーリング材かエポキシ樹脂)を注入する工法となります。

シーリング材はひび割れ部分の挙動が大きいと予想される場合に使い、エポキシ樹脂はひび割れがあまり動かないと判断された場合に使われるのが一般的です。

VカットやUカットはシール工法よりも奥までしっかりとシーリング材やエポキシ樹脂を入れるのができます。そのため、補強度が高くなるのが特徴です。

特にUカットは削る体積が大きいので、より多くの補強材を注入できます。また、作業内容が比較的簡単なこともあり、ひび割れ補修方法の主流です。

一方のVカットは、作業員に一定以上の技術力が必要となります。そのため、誰でもキレイな仕上がりにできるというわけではありません。また、削る部分が少ないので、Uカットに比べれると補修材の量が少なくなってしまうというデメリットもあります。とはいえ、VカットはUカットよりも削る部分が少ないので、粉じんが少量です。しかも、作業をスピーディーに行えるメリットもあります。

3-3.注意点

VカットやUカットを行うと補修の痕が目立ってしまうというデメリットがあります。工事業者を選ぶ場合は、事前に実績を調べ、腕のある職人を抱える業者を選ぶようにしましょう。

クラックの補修工事には複数の方法があるんですね。
はい。どの方法を選ぶかは業者とよく相談しましょう。

4.マンションにおけるひび割れ(クラック)補修工事の詳細

マンションにおけるひび割れ(クラック)補修工事の詳細

4-1.費用と工事期間

1フロア当たりの面積がマンションによって違うので何ともいえませんが、5階建てで400万円~600万円程度。10階建てで800万円~1200万円程度が一般的な費用です。ただし、補修箇所によって値段は大きく変化しますので、部分補修であれば非常に安くすみます。

工事期間については、簡単なものであれば5階建てマンションで1週間~2週間程度。10階建てマンションで2週間~3週間程度です。ただし、補修箇所の数によって工期も大きく変化します。大規模な補修が必要な場合、1か月~5か月ほどの長期間になることも珍しくありません。

4-2.ひび割れ補修は誰が依頼するの?

マンションには『専有部分』と『共用部分』というものがあり、どちらの補修を行うかによって主体が変化してきます。

専有部分とは分譲マンションにおける壁内部の間仕切り壁や内壁……平たくいえば、玄関の内側から始まる『住居空間』のことです。専有部分の補修責任があるのは、各住居の所有者……つまり、区分所有者となります。逆説的に、区分所有者でなければ責任はありません。よって、賃貸マンションの場合は区分所有権がないので、原則として専用部分とは見なされないでしょう。

一方、共有部分とは、その言葉のとおりマンションに住んでいる方が共用で使う部分を指します。具体的には以下のような場所が一般的です。

  • 駐車場
  • 駐輪場
  • エレベーター
  • エレベーターホール
  • 階段
  • 共用廊下
  • アルコーブ、ポーチ
  • バルコニー
  • 屋上
  • 電気、水道、ガス設備

場合によっては玄関扉や窓枠、窓ガラス、天井・床・壁の一部コンクリートなども、共有部分に含まれることもあります。

そして、これら共有部分の補修責任者は、マンションの管理組合です。

4-3.住民の費用負担について

専有部分の補修に関しては、場合によっては管理組合から補助金が出ることもあるでしょう。しかし、原則として区分所有者が1人で負担することになります。

共有部分の補修に関しては、管理組合の負担が基本です。とはいえ、住民は管理費というものを支払っていますから、大きく考えれば住民自身で払っているのと同じこととなります。

共用部と専有部では、補修の義務を負う責任者が異なるんですね。
はい。共用部の修理は、時間と費用がかかることも多いでしょう。

5.マンションのひび割れ(クラック)補修業者を選ぶ際のポイント

マンションのひび割れ(クラック)補修業者を選ぶ際のポイント

5-1.補修業者を選ぶ際のポイント

業者を選ぶ際のポイントは主に以下の4点です。

  • 実績があるかどうか
  • 分割工事における値段
  • 足場を組み立てるかどうか
  • アフターサービスがあるかどうか

まず、実績があるかどうかについて。これは簡単で、今までにどれだけの工事を行ってきたのか、ということです。これをしっかりと判断せずに依頼してしまうと、起業したばっかりで作業員の実力が低い業者に当たってしまうこともあります。必ずホームページや口コミなどを見て、実績がどの程度なのかを調べてください。

また、分割工事ができるかどうかも重要です。補修箇所が広範囲にわたる場合、一気に行おうとすると非常に時間がかかってしまいますよね。そのため、年度ごとに分けて工事を行う『分割工事』というサービスがあるのです。しかし、分割工事を依頼するとどうしても依頼料が高くなってしまいます。ですから、分割工事をしても依頼料が大きく変化しない業者を選ぶのがポイントの1つです。

足場を組み立てるかどうかも大きなポイントとなります。「え? 足場を組み立てないことってあるの?」と驚かれる方も多いでしょう。しかし、最近はさまざまなデメリットから足場を組み立てない業者が増えています。

足場を組むには労力も時間もかかりますから料金が高くなるというデメリットが1つ。そして、足場を作ると覗き(のぞき)や泥棒の侵入経路として使われてしまうデメリットが1つあります。特に、後者のデメリットはとても見逃せませんよね。そこで、最近はロープを使って屋上からつられるようにして行う工法……いわゆる無足場工法が主流になりつつあります。マンションの補修工事の場合は、特に注目してほしいポイントです。

また、アフターフォローもしっかりしているか確認しておきましょう。適当な工事をされてそのまま放置されてはたまりませんよね。工事の依頼の際には、必ずアフターサービスの有無を尋ね、あるようであれば内容をしっかりと精査しましょう。

5-2.工事費用の節約法

工事費の節約法で最もポピュラーなのは、足場をなくすことです。そう、実は無足場工法は泥棒被害などを防ぐだけではなく、工事費の節約にもなります。考えてもらえれば非常に単純なのですが、足場を組むと資材が多く必要になるからです。また、作業員の労力も、設置の時間も大きくかかります。そうなれば、工事費が加算されるのは当然のことです。

工事費の節約をしたい方は、無足場工法に着目しましょう。

5-3.無料見積もりをとろう!

工事の依頼をすることに決めたら、まず無料見積もりをとりましょう。

多くの業者では、見積もりを無料で行ってくれます。複数の業者に見積もり依頼を出し、比較して安い業者を選ぶというのも1つの手ですよ。

見積もりの申し込みは企業のホームページから行うことができます。住所などの必要事項を入力フォームに記載して送信しましょう。もちろん電話で依頼をすることも可能です。

5-4.業者を選ぶ際の注意点

業者を選ぶ際に注意したいのが、悪徳業者ですよね。悪徳業者はどうやって見極めればいいのでしょうか?

明確な判断方法はありません。しかし、あえて挙げるのであれば『情報発信をしているかどうか』が悪徳業者を見極める上で重要な要素です。

今はさまざまな情報提供ツールが普及しています。たとえば、Twitterやフェイスブック、ブログなどです。多くの企業では必ずどれかを行い、積極的に自社のアピールを行っています。逆説的に、ネットを使って情報発信していないような業者は企業努力が足りないともいえるのです。

また、Twitterやフェイスブックは告発のツールとしても使えます。ですから、業者が詐欺などを行えば、瞬く間に苦情が殺到し炎上してしまうことでしょう。苦情が殺到していないということが、業者の優良さを表すメーターにもなるわけです。

ぜひ、Twitterやフェイスブック、ブログの確認をしてくださいね。

値段だけで業者を選んではいけないんですね。
はい。実績を確認し、複数の業者から見積もりを取りましょう。

6.マンションのひび割れ(クラック)工事に関するQ&A

マンションのひび割れ(クラック)工事に関するQ&A

Q.見積もりはどのくらいの期間でとれますか?

工事の規模によってまちまちです。一般的なマンションであれば1週間前後で提出してもらえます。

Q.どのくらいの実績を目安にすべきでしょうか?

できれば10年以上の実績があると確かです。特に無足場工法などは不安定な場所で行う作業ですから、実績は仕上がりに大きく変化してしまいます。

企業ホームページの『よくある質問』や『Q&A』などで実績を確認してみてください。

Q.無足場工法は安全なのですか?

マンションでは人の往来も多いので、無足場工法の安全性は気になるところですよね。落下物で通行人がケガしたり、補修材や塗料などが落ちて人や施設が汚れたりしないだろうか、などと考えてしまいますよね。

しかし、ご安心ください。しっかりと実績を積んだ会社であれば、長年のノウハウで安全の取り方も確実です。危険なことはまずありません。

ただし、当然のことながら実績が少ない業者ではリスクも高まります。ですから、無足場工法を採用する際には、必ず10年以上の実績を基準に選びましょう。

Q.無足場工法にデメリットはないのですか?

無足場工法は非常に優れた工法ですが、当然デメリットも存在します。ブランコに乗ってロープでつり下げられる工法なので常に不安定です。そのため、安全上の問題で、非常に強い風が吹いているときなどには作業を行うことができません。

また、作業する場所が奥まっている(オーバーハングしている)場合は、作業自体が行えないこともあります。

Q.屋上にロープをかける場所がありませんが、無足場工法が可能なのですか?

可能です。特殊な仮設器具を設置することでロープのつり元を確保します。ただし、ノウハウのない業者はできないこともあるでしょう。

まとめ

マンションにおけるひび割れを補修する際のまとめ

今回はマンションにおけるひび割れを補修する際の基礎知識をご紹介しました。

ひび割れというのは、意外にも建物の構造にまで影響を与えてしまうことがあります。そして、地震大国の日本ではそのちょっとした影響が大きな惨事につながる可能性があるのです。

今回の記事を参考に、しっかりとマンションの補修を検討しましょう。


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