マンションの大規模修繕ってどうやるの? 外壁補修の基礎知識!
大規模修繕工事は、マンションにおいては絶対に必要な工事です。そのため、近々大規模修繕工事を行おうと考えている方も多いことでしょう。しかしながら、言葉では知っていても、実際にどのように行えば良いのか分からないという方もいます。分からないまま適当に工事を行うとを、数千万単位で損をするかもしれませんよ!
そこで今回は、初心者でも分かる大規模修繕の基礎知識をご紹介します。
これらの記事を読むことで、マンションの外壁補修にまつわる基本的な知識を得ることができます。業者選びのポイントや費用の抑え方などについても解説していますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。
1.マンションの外壁補修について
1-1.外壁補修って何?
マンションを含め、建物の外壁部分というのは、さまざまな要因によって損傷・劣化します。経年劣化によるものであったり、雨や風、あるいは地震が原因のこともあったりするでしょう。さまざまな理由によって外壁に生じた損傷・劣化を補修することを、外壁補修といいます。
1-2.外壁補修の必要性
外壁にひびが入っていたり、塗装が剝がれていたりする状態のまま放置しておくと、建物の強度が低くなってしまいます。ひびがあれば、その部分から雨が浸入し、内部の鉄筋をサビさせるリスクがあるでしょう。
また、塗装が剝がれていれば、内部のコンクリートが劣化してしまいます。そうなれば、いざ大震災が起きた際に耐えられないかもしれません。日本は地震大国です。気象庁の発表しているデータによれば、M8.0以上の地震は、5年に1回の頻度で発生しています。もしかしたら、明日にも私たちの住んでいる地域で大地震が起きるかもしれません。ですから、少しでも建物の強度を落とさないことが非常に大切なのです。
1-3.外壁補修するタイミングは?
10年~15年に1回を目安として補修を行うのが良いでしょう。これは、外壁塗装は寿命が10年前後のものが多いからです。ただし、外壁の状態が悪いようであれば、早めに補修をするのも良いでしょう。注意してほしいこととして、早め早めを心がけてください。
マンションほどの大規模な建物になると、1回でも建物の内部に致命的な損傷を受けると修繕が難しいからです。外壁補修を後回しにしていて建物の内部が劣化してしまえば、余計な修繕費用が掛かってしまいますよ。
1-4.気をつけたい症状
真っ先にあげられるのは、やはりひび割れです。ひび割れを放置しておくと、隙間から雨が浸入します。最悪の場合は鉄骨部分にまで到達し、サビさせてしまうでしょう。あたり前のことですが、鉄はサビるともろくなります。雨にさらされて鉄骨がサビれば、建物の強度が著しく低下してしまうでしょう。
また、タイルが剝がれた場合も注意が必要です。タイルが剝がれた場所から雨が浸食するリスクはもちろん、ほかのタイルが落下する危険もあります。もしも、タイルが落下して人に当たってしまえば、大変なことです。タイルが剝がれている場合には、特に素早く対処しましょう。
2.マンションの外壁補修と一戸建ての外壁補修との違い
2-1.それぞれの特徴
一定規模以上のマンションやアパートでは事前に補修計画を立て、お金を積み立てていきます。そして、10年、15年ごとなどの決められたタイミングで、必ず行うわけです。これに対して一戸建ての場合、外壁補修をするかどうかは家主の裁量で決まります。そのため、お金を積み立てていないことが多く、お金を用意するのに苦労することが多いでしょう。
また、マンションを含めた、大規模施設(劇場・百貨店・マーケット・旅館・ホテル・病院・共同住宅・寄宿舎など)では、不特定多数の人が利用します。そのため、災害時に被害が大きくなることが想定されていました。そのため、2008年に建築基準法が改正され、専門家による建築物や建築設備を定期的の点検と特定行政庁への報告が義務づけられています。ちなみに、一軒家においてはこのような義務はありません。
2-2.大規模修繕とは?
大規模修繕工事とは、マンションの経年劣化や損傷を改善するために実施する、計画的修繕工事の総称です。マンションで行う大規模修繕工事は、建築基準法で規定されている『大規模な修繕』とは違います。そのため、『確認申請』を行う必要がありません。確認申請が必要な場合、つまり建築基準法における大規模な修繕というのは、主要構造の1種以上について行う過半の修繕・模様替えのときだけです。主要構造については、建築基準法において次のように定義されています。
『壁、柱、床、はり、屋根、または階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切り壁、間柱、附(つ)け柱、掲げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段そのほか、これらに類する建築物の部分を除くものとする』
ここだけ見ると、壁が入っているため、外壁補修の際には必要に思えます。しかし、外壁塗装の塗り替えや、タイルの貼り替えなどは、あくまで仕上げ作業です。主要構造部の壁そのものではありませんので、確認申請が不要となります。また、ひび割れ補修の場合は壁そのものの補修ですが、多くのケースでは一部だけの補修なので『過半』とはなりません。そのため、この場合も確認申請は必要ないのです。
2-3.一戸建て工事との違い
真っ先にあげられるものといえば、工期の違いでしょう。マンションの場合、工事箇所が広範囲になるので工期が長くなります。また、費用にも差が出てくるでしょう。マンションの場合は非常に高額となります。
2-4.補修後の耐用年数
補修後の耐用年数に関しては、使用している外壁塗装やタイルなどに依存します。そのため、同じ素材で補修を行えば、マンションも一軒家も耐用年数に違いはありません。ただし、木造一軒家の場合、マンションに比べて建物自体の寿命が短めです。そのため、より狭いスパンでの補修を行うことが推奨されます。
ちなみに、建物自体の税法上の耐用年数はマンションが47年なのに対し、木造一軒家は22年です。ただし、一軒家だからといって必ずしも耐用年数が低いわけではありません。長期優良住宅の認定を受けている住宅は、通常の管理を行えば寿命が100年程度は見込めます。
3.マンション外壁補修工事の流れ
3-1.工事期間の目安
マンションの規模や行う修繕内容にもよりますが、通常3か月~10か月ほどの時間を要するでしょう。ちなみに、一軒家の場合、早ければ1日で修繕を行うことができます。
3-2.工事の流れ
工事の流れは、主に以下のようなものです。
- 工事の前に現場視察を行う
- 足場の設置を行う
- 修繕開始
- 週前後に業者と依頼者で確認
- 修正点があれば塗装の塗り直しなどを行う
- 問題がなければ、工事終了
3-3.費用相場と安く抑える方法
大規模修繕工事の金額は、1戸あたり70~100万円程度です。たとえば、14階建て100戸のマンションであれば、約7,000~1億円もの大金が必要となります。非常に大きなお金が掛かるだけあって、できるものなら費用を安く抑えたいところですよね。
費用を抑えるには、工法を工夫する必要があります。おすすめは『無足場工法』の導入です。無足場工法とは、足場を設置しない代わりに、屋上などからロープにつり下げられた状態で作業を行います。これにより、足場代を浮かすことができるので、修繕費用を抑えることが可能です。
足場代を浮かせて意味があるのか。焼け石に水なのではないか、と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、実は全体の『20%程度』の割合を足場代が占めているのです。つまり、1億円の修繕費用の内、2,000万円は足場代ということになります。浮かせられれば、非常に大きいのはいうまでもないでしょう。
3-4.見積もりについて
業者への見積もりは無料で行うことが可能です。ですので、1社だけに決めて見積もりを取るのではなく、複数社に見積もりを請求しましょう。その上で、1番条件の良い業者を選ぶようにすれば、優良業者に出会える確率がぐっと高まりますよ。
4.住民への告知について
4-1.いつ告知するか
通知が遅いことで住民との間でトラブルになることがあります。そのため、できるだけ早めに告知することが大切です。最低でも3か月前には行っておきましょう。
4-2.告知方法
告知の方法として一般的なのは、協力事項や工事日程などの記載された紙をポストに投函(とうかん)するというものです。このほか、共用の掲示板に貼り付けるなどの工夫も同時に行うと、よりよいでしょう。また、1度だけで終わらせるのではなく、何回か告知の紙を送るようにしましょう。1回だけだと、住民が見逃すリスクがあるからです。
また、配る人間もミスで投函(とうかん)し忘れることがあるかもしれません。これが、たとえば3回行っていれば、住民側のミスで見逃しても反論はできませんし、配る人間のミスにしても、3回とも同じ場所で同じミスをするわけがないですよね。ですから、複数回の告知はクレーム対策になります。
4-3.告知の重要性
告知をしっかりとしておかないと、住民からのクレームが発生してしまいます。もしも複数の住人が団結してしまえば、非常に大きな問題となってしまうでしょう。そうなれば、修繕をする以前の問題です。修繕が遅れてしまいますし、トラブルの収束にも力を入れなくてはならなくなってしまいます。
5.マンション外壁補修の業者選び
5-1.選び方のポイント
業者を選ぶ際には以下のポイントに注目することが重要です。
- 無足場工法を導入しているか
- 実績がどの程度か
- ブログやTwitterなどで情報発信しているか
- アフターフォローやメンテナンスをしてくれるか
1番重要なのは、無足場工法を導入しているかどうかでしょう。すでにお話ししたように、大規模修繕工事において、足場を作るか作らないかは非常に大きな点です。ですから、できれば無足場工法を導入している業者を選びましょう。さらに、無足場工法を導入してから、どのくらいの実績があるかを確認することも大切です。最低でも10年以上の実績を持っている業者をおすすめします。
また、ブログやTwitterを利用して、自社の情報を積極的に発信していることも重要でしょう。情報発信を自らしているということは、自社に自信を持った上で、広く知られたいと考えているからです。悪徳業者は自社に自信などありませんから、悪徳業者に引っかかるリスクが下がります。さらに、アフターフォローやメンテナンスを行ってくれるかどうかも重要な点です。工事をしたは良いものの、不具合が出ても放置するような業者では困ってしまいますよね。事前に、アフターフォローやメンテナンスについて尋ねておくことが大切です。
5-2.業者選びの注意点
業者選びの注意点は、悪徳業者に気をつけるということです。業者の中には、法外な値段を提示するような業者も紛れ込んでいます。住民たちの積立金を使う以上は、おかしな業者に依頼するわけにはいきません。しっかりとした業者を選ぶ必要があります。そして、しっかりとした業者を選ぶ上で最も大切なのが、他社の見積もりも取るということです。複数の見積もり取れば、正しい料金プランなのかどうかを知ることができます。また、電話対応時に態度が悪い場合は悪徳業者のリスクが高いので、避けた方が無難です。
6.マンションと大規模補修のよくある質問
Q.マンションの寿命はどのくらいなのですか?
A.税法上の耐用年数は47年ですが、現実的には60年程度でしょう。ただし、これはしっかりと修繕工事を続けていた場合の年数です。修繕工事を適当にやっている場合は、当然寿命も縮まるでしょう。
Q.修繕工事の前の診断はなぜ必要なのですか?
A.マンションの大規模改修を行う際には、事前に建物の診断を行う必要があります。その理由は、周辺環境や部位によって建物の劣化具合に差が出るからです。どこがどう劣化しているのかをしっかり確認しておかないと、修繕し忘れる箇所が出てきてしまいます。
Q.大規模修繕の計画を立てる上で重要なことは何ですか?
A.大切なことは、お金の積み立てをしっかりと行えているかどうかでしょう。お金がなければ修繕工事を行うことができないので、あたり前ですね。その上で、長期修繕計画がちゃんと制作されていることが大切となります。計画をしっかりとできていないと、大問題になってしまうので注意しましょう。
Q.手抜き工事の対策方法はありますか?
A.おすすめはコンサルタントへの依頼です。コンサルタントに工事監督をしてもらうことで、手抜きがされていないかをチェックできます。
Q.コンサルタントはどのようにして選ぶと良いのですか?
A.基本的には、実績や経験が1番重要な点でしょう。なぜなら、コンサルタントという職業は、担当個人の能力が非常に強く出るためです。
まとめ
今回はマンションの大規模修繕について中心にご紹介しました。マンションの外壁はさまざまな要因によって、日夜劣化し続けています。劣化がひどい状態で放置し続けると、雨水などが壁の中に入り込み、最悪の場合は骨組みをサビさせてしまうでしょう。そうなってからでは遅いので、定期的な修繕工事が重要なのです。修繕工事には、1戸あたり70~100万円が相場となっています。
費用を安く抑えるには、無足場工法が重要です。無足場工法を行っている業者を選びましょう。ただし、無足場工法を行っていても、実績がない業者を選んでは意味がありません。どのくらいの実績があるのか、HPなどを確認しておきましょう。今回の記事を参考にして、大規模修繕工事を成功させてくださいね。