ビルの外壁調査ではどんなことをするの? 必要性や調査内容を解説


「ビルの外壁調査はどのように行うのか」「どの程度の費用がかかるのか」など、ビルの外壁調査についてよく分からない方は多いでしょう。外壁調査は、建物の面積や調査方法によって内容と費用が変わります。費用が高いから……と外壁調査を怠ると、劣化症状に気づけなくなるので注意が必要です。

本記事では、ビルの安全性を保つための外壁調査について解説していきます。

  1. ビルの外壁調査が必要な理由は?
  2. ビルの外壁調査ではどんなことをするのか?
  3. ビルの外壁調査に関してよくある質問

この記事を読むことで、ビルの外壁調査が必要な理由や内容が分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。

1.ビルの外壁調査が必要な理由は?

ビルの外壁調査は、なぜ必要なのでしょうか。ここでは、外壁調査の基本情報や必要性を解説します。

1-1.ビルの外壁調査とは

どれだけ立派なビルでも、経年劣化によってさまざまなリスクを負うことになります。定期的なメンテナンス・外壁調査を怠ると、ビルの劣化が進行しては台風・地震など自然災害に弱い建物になってしまうのです。特に、雨風や紫外線にさらされる外壁は、建物の中でも劣化スピードが速く、強度も低下しやすくなります。だからこそ、定期的に外壁調査を行い、どのような状態になっているのか把握することが大切です。

1-2.外壁調査で分かること

ビルの外壁調査では、ひび割れ・浮き・膨らみなど外壁の状態をチェックします。目で見た情報から状態を把握するのはもちろんのこと、外壁調査を行うことで内部の劣化症状にもいち早く気づけるのです。劣化をそのままにしておくと、外壁材が剝がれ落ちて通行人にケガをさせてしまうなど、重大な事故につながる可能性もあります。そのようなリスクを避けるためにも、外壁調査で建物全体に異変が起きていないか・補修や工事の必要があるかを見極めることが大切です。

1-3.耐久性を維持するため

ビルの外壁は雨や風・地震など大規模災害にも対応できるようになっていますが、それは「外壁に問題がないこと」が前提の話です。新築のビルは外壁材や外壁塗料の性能が十分に発揮されています。けれども、築年数が経過しているビルは経年劣化によって性能も失われ、耐久性が低下している恐れがあるのです。経年劣化は避けられないものなので、少しでも耐久性を維持するためにも外壁調査が必要になります。

1-4.事故のリスクを避けるため

前述したように、経年劣化で外壁の一部が崩れたり、外壁にかかっている看板が落下したりする事故が起きる可能性はあります。落下物が通行人にあたってケガをした場合、損害賠償が発生することもあるのです。そのようなリスクを回避するためにも、外壁調査が必要になります。

1-5.外壁調査が義務に

国土交通省は、建築基準法第12条に基づく定期報告制度を改正しました。平成17年には「既存建築物における外壁タイル等落下防止対策について」の指導文書を出しています。そして、平成20年4月1日以降、外壁改修から10年が経過した建物は、全面打診等により調査が必要になりました。建築基準法によって建築物や昇降機などの定期的な調査・検査が義務づけられ、その結果を所有者・管理者は国に報告しなければなりません。報告を怠ると法令違反となり、100万円以下の罰金が科せられます。

1-6.外壁調査が必要とされる実施時期

外壁調査が義務づけられたことによって、その必要性が改めて見直されています。なお、外壁調査が必要とされる実施時期は以下のとおりです。

  • 特定建築物定期調査で異常が認められた場合
  • 完成後10年が経過している
  • 外壁改修後10年が経過している
  • 外壁の全面打診等調査を実施してから10年が経過している

万が一、事故等が発生した場合、きちんと定期報告をしていたかどうか、外壁調査の内容が重要な参考資料となります。ビルの外壁調査を行うことで計画的な修繕や維持管理ができるほか、維持保全費用の節約にもつながるでしょう。

2.ビルの外壁調査ではどんなことをするのか?

外壁調査の主な方法は、打診調査・赤外線調査・ドローン外壁調査があります。それぞれ内容を見ていきましょう。

2-1.打診調査

打診調査は、テストハンマーや打診棒などの道具を使って壁をたたく方法です。打診では壁をたたいたときに出る音で、外壁材が浮いている場所を的確に見つけ出すことができます。また、打診調査と同時に目視と触診で外壁の状態を確かめることになるでしょう。熟練の検査員は、劣化箇所を明確に把握できる目を持っています。逆にいうと、打診調査はベテラン検査員でなければ難しい調査方法です。打診調査を依頼する際は、ある程度外壁の施工経験と実績がある業者を選ぶ必要があります。

2-1-1.打診調査で分かること

打診調査では外壁をたたいた音で、外壁材の中に生まれている空気層を見つけることができます。その音の大きさによって、空気層の厚さ・外壁材の浮きの大きさまでが分かるのです。外壁材が浮いているほど、大きめの空気層が発生している証拠といえます。

2-1-2.打診調査の方法はさまざま

ビル打診調査は、足場を組んで行う方法・高所作業車を用いる方法・屋上からロープを使って行うロープアクセス方法があります。業者によって方法は異なりますが、狭い立地で足場が組めず、高所作業車も用いることができない場合はロープアクセス方法になるでしょう。ロープアクセス方法なら狭い立地でも対応でき、部分的な外壁補修工事も可能です。また、足場を組まない・高所作業車を使わないことで、外壁工事にかかるコストも大きく削減できます。なお、ロープアクセス工法の主な手順は以下のとおりです。

  1. 屋上からメインロープ・ライフラインといった2本の丈夫なロープを固定する
  2. ロープをビルの下につるす
  3. 検査員が外壁を打診棒でたたきながら外壁を調査する

熟練の検査員であればあるほど、異変に素早く気づきます。

2-2.赤外線調査

赤外線を使って撮影した画像を解析し、外壁の状態をチェックする方法が紫外線調査です。打診調査とは違い、未熟な検査員でも簡単に調査できる方法となります。赤外線を使うからこそ内部まで外壁の状況が把握でき、打診調査では分からないことも画像によって解析できるのが大きな特徴です。

2-2-1.赤外線調査の方法

基本的に、赤外線調査は高所作業車での調査になるため、足場を組む必要はありません。安全性が高く、コストも最小限に抑えることができます。また、調査時間が短いこともあり、最近では打診調査よりも多くの現場で採用されているのです。

2-2-2.赤外線調査で分かること

何よりも、打診調査では分からない微細な浮き状況まで把握できる点が赤外線調査の大きなメリットといえるでしょう。特に、モルタル+塗装仕上げ外装の場合、状況によっては打診調査よりも赤外線調査のほうが明確かつ細部まで状態が分かります。赤外線を使えば浮きの可視化が可能になるため、調査で得た画像を補整することで正確な損傷位置が把握できるのです。損傷位置が明確になれば、必要な箇所だけ補修できるので費用削減につながります。

2-2-3.周辺環境や立地条件によっては撮影できない場合も

赤外線調査は注目されている外壁調査の方法ではありますが、デメリットもあります。赤外線調査のデメリットは、周辺環境や立地条件によっては撮影できない点です。赤外線調査ができない場合は、ほかの方法で調査しなければなりません。また、天候に左右される・解析精度が不安定というデメリットもあります。

2-2-4.複数の調査方法を組み合わせる

赤外線調査のデメリットを補うためには、複数の調査方法を組み合わせる方法があります。赤外線調査だけで外壁調査を行うのではなく、打診調査も同時に用いることでより安定した調査結果が得られるというわけです。ビルの外壁調査は範囲が広いため、複数の調査方法を組み合わせたほうが効率的でしょう。そのほうが、スピーディーかつ的確に劣化箇所が特定できます。

2-3.ドローン外壁調査

最近、採用されるようになったのが、ドローンによる外壁調査です。地上で検査員がドローンを操縦して、外壁をカメラで撮影していきます。リアルタイムで画像を確認できるのはもちろんのこと、検査員や高所作業車では確認ができない高層部分の外壁調査も可能です。また、足場もロープの設置も要らないので、調査時間も短縮できるメリットがあります。

2-3-1.ドローン外壁調査で分かること

高層ビルの場合、人の目では確認できない場所がどうしても出てきます。そこで、ドローンを使って空撮すれば、高所はもちろんのこと、狭いスペースの外壁も正確に調査できるのです。撮影をする点では、赤外線外壁調査と同様ですが、ドローン外壁調査は広い範囲や狭い場所も調査できる方法といえるでしょう。

2-3-2.ドローン外壁調査の限界

何かと便利なドローン外壁調査ですが、天候に左右されるデメリットがあります。また、ビルの立地条件によっては、ドローンを飛ばすことができません。注目されている外壁調査方法といっても、まだ普及されていないので調査に限界があります。だからこそ、それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、いろいろな調査方法を組み合わせることが大切なポイントです。

3.ビルの外壁調査に関してよくある質問

ビルの外壁調査に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.打診調査の費用はいくらぐらいか?
A.外壁業者によって費用は変わりますが、それぞれの費用相場は以下のとおりです。

  • 足場ありの打診調査:1㎡あたり約100円~+足場代。内訳は調査概要・損傷写真・損傷立面図・調査状況の写真等
  • ロープアクセス法の打診調査:1㎡あたり300~700円程度。費用の内訳は調査概要・損傷写真・損傷立面図・調査状況の写真等
  • 赤外線調査:1㎡あたり100~350円程度。内訳は部分打診と目視調査を含む赤外線撮影・画像解析・損傷立面図・調査状況の写真等
  • ドローン外壁調査:1㎡あたり約300円~+基本料金。内訳は解析報告書・申請書類等

具体的な費用が知りたい方は、複数の業者に無料見積もりを依頼してください。1社だけでなく複数の業者を比較することで、だいたいの費用が分かるでしょう。

Q.打診調査ではどのような道具を使うのか?
A.100%人の手で行う打診調査では、以下の道具を使います。

  • 打診棒:長さ約0.1~3.0m。先端に球体がついており、壁面上で転がしたり、たたいたりして出た音から外壁の状態を判断する。球体の素材は、金属製・プラスチック製の2種類。プラスチック製のものは打音が小さく、マンション等のタイル外壁調査に向いている
  • テストハンマー:長さ0.4~0.9mのカナヅチのような形状をしており、壁面をたたいて打音を発生させる。コンクリート・下地モルタルの塗りが厚い場合の調査に用いられることが多い。調査中に外壁が剝がれ落ちそうなときは、とがっている先端でたたき落とす。

Q.外壁調査だけの依頼はできるか?
A.できます。優良の外壁業者は、外壁調査だけでも依頼を受け付けているところがほとんどです。外壁調査で補修箇所を見つけたとしても、無理に補修工事を依頼する必要はありません。念のために、ホームページ等で外壁調査だけ依頼できるかチェックしてみてください。

Q.外壁調査の検査員は有資格者なのか
A.資格はありません。しかし、検査員の腕によって調査結果が左右されることもあるため、なるべく実績と経験のある外壁業者に依頼したほうが良いでしょう。オフィスチャンプでは無料相談や無料見積もりを受け付けていますので、外壁調査でお悩みの方はぜひ一度お問い合わせください。経験豊富なスタッフが対応いたします。

Q.ドローン外壁調査はどのビルでも対応できるのか?
A.ビルの立地によっては、ドローンが飛ばせない場合があります。どのような方法で外壁調査ができるのか、外壁業者に確認しておいたほうが良いでしょう。

まとめ

ビルの外壁調査は、建築基準法によって定期的点検と報告が義務づけられています。主な調査内容は、打診調査・赤外線調査・ドローン外壁調査の3種類です。丈夫で立派なビルでも経年劣化によって外壁は劣化するため、定期的なメンテナンスが必要になります。ビルの外壁調査をしっかりと行い、劣化箇所を補修しましょう。


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