ビル大規模修繕のコストを抑える方法は? 無足場工法のメリット・デメリット
ビルの大規模修繕となると高額なコストがかかり、計画の立案から工事完了まで長期間にわたって進める必要があります。
一体どのような点に注意して進めればいいのか、コストを最小限に抑える方法はないのかと、ビルの大規模修繕で頭を抱えている方は多いでしょう。ビルの大規模修繕における基本プロセスや重要性、コスト削減のポイントなどを把握しておけば、予算内でスムーズに工事を終わらせることができます。
本記事では、ビル大規模修繕の基本や押さえておきたいポイントなどについて詳しく説明しましょう。
この記事を読むことで、ビル大規模修繕のコスト削減につながる無足場工法のメリットとデメリットなども分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。
1.ビル大規模修繕の基本を把握しよう
最初に、ビル大規模修繕の一般的なプロセスや重要性など、把握しておきたい基本情報をチェックしましょう。
老朽化による不具合を防ぐための工事
そもそも、ビルの大規模修繕は老朽化によって引き起こされるさまざまな不具合を未然に防ぐための工事です。国土交通省の発表によると、ビルの平均寿命は約50年といわれています。定期的なメンテナンスや点検を行えば50年以上保てることもありますが、50年以上が経過するとさまざまな箇所に不具合が生じ始めるのです。ビルの老朽化を放置していると、耐久性が著しく低下してしまい、地震や台風などの自然災害で倒壊するリスクが高まります。老朽化による不具合を未然に防ぐためにも、大規模修繕を行う必要があるのです。
大規模修繕で行う工事内容
では、ビルの大規模修繕では、具体的にどのような工事をするのでしょうか。ビルの状態や劣化具合によって内容は異なりますが、主な工事は以下のとおりです。
- 外壁と鉄部の塗装
- シーリングの打ち替え・増し打ち
- 屋上・バルコニー・外階段・廊下などの防水工事
- ガスや電気などライフラインの設備工事
大規模修繕の工事内容を決める前に、まずはビルの状態を調査します。目視調査や赤外線調査などでビルの外壁や内部の状態を確認し、工事内容を決めるのが大切なポイントです。
ビル大規模修繕の大まかな流れ
事前にビルがどのくらい劣化しているのか、どのような状態なのかを調査した上で、以下のような流れで大規模修繕を進めることになります。
- 施工会社と工事請負契約を交わし、住居者やテナントへの工事説明会を実施する
- 近隣へ挨拶(あいさつ)を済ませた後、仮設工事事務所や仮設トイレの設置など、仮設工事をする
- 劣化部分の下地補修工事で、ひび割れや浮きなどの補修を行う
- 内外外壁面のタイル貼り替えや、浮部分の接着などを行う
- シーリング工事→塗装工事→防水工事の流れで進める
- ガラスやサッシなど非塗装面のクリーニング、外壁の洗浄を行う
- 竣工検査、竣工図書の内容をチェックする
なお、ビルの規模によって異なりますが、大規模修繕の計画から着工まで約1~2年間、着工から工事完了まで約2~6か月かかります。
2.一般的な修繕方法と費用の目安
ここでは、大規模修繕の一般的な方法と費用の目安を解説します。
劣化箇所の修繕が主な目的
ビルの大規模修繕では、劣化箇所を修繕することがメインとなります。たとえば、外壁の下地が著しく傷んでいる場合は、外壁塗装前に下地補修を行うなどです。下地補修をせずに外壁塗装を施すと、すぐに不具合が生じてしまいます。下地補修をしっかりと行うことで、外壁塗装の役割を十分に果たすことができるのです。なお、下地補修は塗装だけでなく、防水工事を成功させるための重要なポイントでもあります。下地補修がしっかりとできるかどうかで、ほかの修繕工事における品質が大きく左右されることになるでしょう。
工事内容別の役割と費用をチェック!
ビルの大規模修繕工事は、下地補修を含め、仮設工事・シーリング工事・塗装工事・防水工事の5つが重要な修繕方法となります。それぞれの特徴と費用をチェックしておきましょう。
- 下地補修:ひび割れなど下地が劣化している箇所を修繕する工事。費用相場は1㎡あたり約600~2,300円
- 仮設工事:大規模修繕を行う際に必要な足場やトイレなどの設置工事。仮設工事費用は全体費用の約3分の1を占める
- シーリング工事:タイルの目地やサッシまわりなどに使用されているシーリング材を新しくする工事。費用相場は1㎡あたり約800~1,300円
- 塗装工事:外壁と鉄部を塗装する工事。費用相場は1㎡あたり約1,300~1,800円
- 防水工事:屋上やバルコニーなど雨風にさらされている場所を中心に、防水処理を行う工事。費用相場は1㎡あたり約3,500~8,000円
なお、ビルの大規模修繕にかかる費用は、1棟あたり約1,500万〜4,000万円が相場となります。定期的なメンテナンスを怠っていた場合、広範囲での下地補修が必要になるため、相場よりも費用が高額になるでしょう。大規模修繕費用を最小限に抑えるためにも、定期的なメンテナンスと点検が必要です。
3.無足場工法のメリット・デメリット
ここでは、無足場工法のメリットとデメリットを解説します。
大きなコスト削減につながる
足場をかけない無足場工法は、大きなコスト削減につながるというメリットがあります。前述したように、足場を設置したり撤去したりする作業には、全体費用の約3分の1を占めるといわれているほど費用がかかる作業です。足場をかけない無足場工法を採用することで、足場の設置と撤去にかかる費用を丸々カットできます。ビルの大規模修繕で費用を最小限に抑えたい方は、無足場工法がおすすめです。
工期が短縮できる
無足場工法は、工期が短縮できるというメリットもあります。ビルの大規模修繕における足場の設置と撤去には、それぞれ約1日はかかるといっても過言ではありません。大規模修繕はビル全体を修繕する可能性もあるため、ビルの規模が大きくなるほど足場の設置と撤去にも時間と手間がかかるでしょう。しかし、足場をかけない無足場工法なら手間と時間を省くことができるので、工期が大幅に短縮できます。
無足場工法は安全対策が必要不可欠
「無足場工法の安全性は大丈夫なのか」という疑問を抱く方は多いと思います。屋上から腰にロープをつないだ作業員が吊(つる)される形で高所作業を行うのが無足場工法の特徴なので、安全対策の徹底は必要不可欠です。無足場工法の安全対策として、産業用ロープを使用するのはもちろん、転落や墜落事故が起きないように安全労働衛生法に基づいて作業をする必要があります。なお、無足場工法の安全性を維持するために、ロープ高所作業車は特別教育の受講が義務付けられているのです。
無足場工法が採用できないケースも
無足場工法は費用の削減や工期の短縮というメリットがありますが、安全面の考慮から無足場工法が採用できないケースもあるので注意が必要です。たとえば、14階以上のビルやマンションには無足場工法は採用できません。前述したように、ロープを用いた高所作業は非常に危険で、安全対策が不十分になってしまうからです。無足場工法は安全面の理由で採用できる建物が限られているというデメリットがあります。ちなみに、三角屋根など屋上の形が変わっている建物も、専用機器の設置が難しくなるので無足場工法は採用できません。
4.ビル大規模修繕の実施事例を紹介
ここでは、オフィスチャンプにおける無足場工法を用いたビル大規模修繕の実施事例をいくつか紹介します。
建物躯体(くたい)の健全化
ビルの大規模修繕ということで規模と施工内容ともに大きく時間がかかりました。主に、躯体補修・シーリング工事・塗装工事・防水床石面補修工事を実施し、工期は約5か月です。全体的に劣化している箇所をしっかりと補修した上で塗装や防水工事等を行ったので、キレイな外観になり、建物躯体の健全化を進めることができました。
外壁からの漏水問題
外壁からの漏水が発生しており、一部隣の屋根が隣接していたため、足場が立てられないケースです。現場を確認したところ、逃げ場のない作業箇所であったので、ロープで加工作業をした後、ロープで昇り直す(懸垂)施工法を採用しました。作業自体は、一般的な塗装をはじめ、シール・防水工事を実施しましたが、ロープ作業だからこそ可能な施工だったと思います。
近隣の建物が近い
近隣の建物との距離が近いという理由で、足場を設置するのが難しく、弊社のロープ作業で外壁塗装を行いました。無足場工法は隣の建物との距離が狭く、足場が設置できない状況でも外壁工事ができる工法です。また、経年劣化と台風の影響で塗膜の浮きが建物全体に見受けられていたため、漏水も含めて、下地補修をしっかりと行います。多数の浮きもきちんと修繕し、悪い箇所はすべて塗膜を撤去した上で新たな下地補修を施し、塗装を行いました。
予算的に低く抑えたい
建物全体ではなく、部分的な補修を行うので予算的に低く抑えたいというご相談です。前回の補修から時間が経過していない状況で、地震・台風の影響で部分的にクラックが見受けられました。ビルの大規模修繕においては、劣化している箇所のみ修繕するケースもあります。無足場工法は部分的な作業も可能なため、結果的に足場を設置するよりも予算を低く抑えることに成功しました。
5.ビルの大規模修繕に関してよくある質問
ビルの大規模修繕に関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.ビル大規模修繕の周期は?
A.明確に定められているわけではありませんが、ビルの大規模修繕は12~15年程度が目安の周期となっています。外壁塗装に関しては、約10~12年で寿命を迎えるケースが多いので、定期的な塗り替えが必要になるでしょう。ビルの大規模修繕における周期を目安にしながらも、何らかの不具合が生じた際は早めの対応が必要です。対応が遅れるほど、状態が悪化するということを覚えておくといいでしょう。
Q.大規模修繕の計画を立てる際のポイントは?
A.ただ単に大規模修繕を行うだけでなく、工事と同時に建物の記録を作ることが大切なポイントです。ビルの建物に関するトラブルが起きるたびに、しっかりと修繕を行い、その記録を残しておく必要があります。大規模修繕の計画を立てる際は、どのような状況になっているのか、これまでどのような修理を行ってきたのかという調査から始まるのです。記録があると、次の大規模修繕でスムーズに計画を立てることができるでしょう。
Q.大規模修繕のコストを抑えるコツは?
A.何よりも定期的なメンテナンスと点検が、大規模修繕のコスト削減につながります。定期的にビルの建物がどのような状況になっているのかチェックすることで、異変にすぐ気づけるようになるからです。前述したように、外壁の劣化など異変に気づけない=状況がどんどん悪化することになります。その結果、修繕費用が高額になり、大規模修繕の工期も延びてしまうというわけです。コスト削減を目指すためにも、定期的なメンテナンスを心がける必要があります。
Q.ビルの大規模修繕で気をつけるべきことは?
A.費用を重視して施工業者を選ばないことです。施工業者の技術によって、ビル大規模修繕の品質が大きく左右されることになります。ビルの大規模修繕に慣れていない施工業者に依頼すると、状態に合っていない方法で修繕を行い、さらにひどい状況になってしまうでしょう。ビルの大規模修繕は高額な費用がかかるからこそ、安心して依頼できる施工業者に依頼することが大切です。
Q.無足場工法を採用する際の注意点は?
A.無足場工法の安全対策を心得ている施工業者を選ぶことです。ロープを用いた高所作業が基本となる無足場工法は、作業員の経験が重要なポイントとなります。作業員の教育はもちろん、ロープ高所作業に長(た)けている施工業者へ依頼してください。
まとめ
いかがでしたか? ビルの大規模修繕は、建物の老朽化による不具合を未然に防ぐための重要な工事です。劣化がひどい状態ほどしっかりとした補修が必要になるため、コスト面で大きな負担がのしかかるでしょう。できるだけ費用を抑えたい方は、足場を設置しない無足場工法がおすすめです。無足場工法は大幅なコスト削減と工期の短縮が実現できますが、安全対策を徹底する必要があります。無足場工法を採用しているオフィスチャンプでは、ロープ高所作業に慣れている作業員が担当するので安全対策も万全です。また、無料相談も受け付けているので、ビルの大規模修繕でお悩みの方はぜひ一度お問い合わせください。